法廷意見
令和5年(あ)第395号 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件令和8年9月14日 第三小法廷決定 主文 本件各上告を棄却する。
理由 被告人甲株式会社(以下「被告会社甲」という。)の弁護人平尾覚、同木目田裕、同木下郁弥及び被告人乙の弁護人平尾覚、同沼田知之、同木下郁弥の各上告趣意は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、被告人丙株式会社(以下「被告会社丙」という。)の弁護人和田衞ほか及び被告人丁の弁護人辻嶋彰、同石部奈々子、同森本哲也の各上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお、所論に鑑み、原判決が被告人らの行為をもって「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条6項)ものと認めたことに関し、職権で判断する。
1 原判決の是認する第1審判決が認定した犯罪事実の要旨は、以下のとおりである。
被告会社甲の幹部である被告人乙、被告会社丙の幹部である被告人丁並びに株式会社A(以下「A」という。)及びB株式会社(以下「B」という。以上の4社を併せて「被告会社等4社」という。)の各幹部らは、それぞれその所属する会社の他の従業者らと共謀の上、それぞれその所属する会社の業務に関し、平成26年4月下旬頃(Bの幹部においては平成27年1月下旬頃)から平成27年8月下旬頃までの間、C株式会社(以下「C」という。)が被告会社等4社を指名して競争見積りの方法により順次発注するリニア中央新幹線に係る地下開削工法によるターミナル駅(品川駅、名古屋駅)新設工事(以下「本件新設工事」といい、そのうち品川駅に関するものを「品川駅新設工事」と、名古屋駅に関するものを「名古屋駅新設工事」という。)について、受注予定事業者を決定すること及び当該受注予定事業者が受注できるような価格で見積りを行うことなどを合意した上、その合意に従って、本件新設工事である品川駅新設(北工区)、同駅新設(南工区)及び名古屋駅新設(中央工区)の各工事について、それぞれ受注予定事業者を決定し、当該各工事に係る競争見積りにおいて、見積書をCに提出する前に、受注予定事業者である会社が代表者となっている共同企業体(以下「JV」という。)の見積価格等に関する情報を、当該会社の従業者が他の会社の従業者に連絡するなどし、もって、被告会社等4社が共同して、本件新設工事の受注に関し、相互にその事業活動を拘束し、遂行することにより、公共の利益に反して、本件新設工事の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
2 原判決が是認する第1審判決の認定及び記録によれば、以下の各事実が認められる。
⑴ 本件新設工事の概要等 ア 品川駅新設工事は、ビル3棟の1階部分に設けられた営業中の東海道新幹線品川駅等の直下を、同駅に平行する形で開削して地下駅を構築する工事であり、ビル1棟の直下を含む北工区とビル2棟の直下を含む南工区からなる。
イ 名古屋駅新設工事は、営業中の東海道新幹線及び在来線の名古屋駅等の直下を、同駅と直交する形で開削して地下駅を構築する工事であり、鉄道線や駅ビルの直下等の4つの区画で構成される中央工区のほか、地下鉄線やビルの直下を含む東工区等からなる。
ウ 前記各工事は、鉄道線の工事桁架設工事、地中連続壁工事、構真柱構築工事、アンダーピニング工事、地下函体構築工事、駅設備設置工事及び受替え・埋戻し工事等からなる。
⑵ 本件新設工事の出件経過及び受注状況等 ア 品川駅新設工事について Cは、平成26年12月25日、品川駅新設北工区工事及び南工区工事を、被告会社等4社を指名して競争見積りの方式により出件した。
Cが採用した指名競争見積方式の概要は、財務状況、技術職員数等の審査事項を所定の数式に当てはめて算出した経営事項審査総合評点、新幹線工事管理者の有資格者数及び営業中の鉄道線(以下「営業線」という。)に近接する工事の施工実績を基にした、社内の請負業者選定委員会による選定結果を踏まえて競争参加者を指名し、参考見積りと技術提案等を受け付け、ヒアリング等を経て社内の技術評価委員会で技術提案等に対する加算点(10点満点)を決め、これと標準点(100点)の合計点を本見積価格で除した評価値を基に第1順位と第2順位の価格協議先を選定し、協議を経て合意に至れば契約するというものであった。
Cは、被告会社等4社から前記各工事の参考見積書及び技術提案書の提出を受け、各社の加算点を決め(最高7.0点、最低6.0点)、各社から本見積書の提出を受けたが、予算との関係で価格協議先の選定に至らなかった。
そこで、Cは、前記各工事のうち、各工程の一部を切り出す形で条件変更を行い、平成27年8月19日、被告会社等4社を指名して、見積価格のみで価格協議先を選定する競争見積りの方式により再出件し(以下、条件変更後の各工事を「品川駅北工区その1工事」、「品川駅南工区その1工事」という。)、同月26日、各社から本見積書の提出を受け、品川駅北工区その1工事については最安値を提示したBと、同駅南工区その1工事については最安値を提示したAと、同年10月までにそれぞれ工事請負契約を締結した。
イ 名古屋駅新設工事について Cは、平成27年4月24日、名古屋駅新設中央工区工事を、前記ア記載の指名競争見積方式により、被告会社等4社を指名して出件し、同年7月30日、指名を辞退したA以外の3社から参考見積書及び技術提案書の提出を受けたが、予算を大幅に上回っていたため、同年8月下旬に手続を中止した。
その後、Cは、被告会社甲及び同丙に対し、前記工事の一部を切り出した工事の非公式の見積り提出を依頼したが、その結果が想定価格を大幅に上回るものであったため、Aの意向を踏まえ、施工範囲を限定するとともに、工事の開始時期を遅らせるなどした上で、平成28年3月、名古屋駅新設中央西工区工事として、前記ア記載の指名競争見積方式により、同甲及びAを指名して出件し、各社の提出した技術提案等に対する加算点を決め、最終的により低額の見積価格を提示したAと工事請負契約を締結した。
⑶ 被告会社等4社の施工実績及び本件新設工事の応札状況等ア 被告会社等4社は、国内最大手の総合建設業者で、土木・建築工事を合わせた年間完成工事高(平成29年3月期)及び経営事項審査総合評点(平成26年3月)で業界1位ないし4位を占め、いずれも、工事桁架設工事を含む営業線近接工事の施工実績のほか、営業線又は既設構造物を受け替えるなどしつつその地下に新たな構造物を構築する工事(以下「地下構造物構築工事」という。)の施工経験も有していた。
イ 被告会社甲は、平成20年5月頃から平成21年2月までは品川駅新設工事及び名古屋駅新設工事について、同年3月以降は後者について、Cの依頼を受けて技術的検討等を行っていた。同甲は、名古屋駅中央工区を受注目標とするとともに、品川駅北工区を自社の傾注案件等と位置付け、出件前からそれぞれ社内検討を行い、各工事での使用を前提に専門業者と掘削機械の開発協議をしていたほか、同駅新設北工区工事及び南工区工事の出件後は、特殊な機械や施工につき専門業者から見積りを取り寄せるなどして作業を進め、技術提案等の内容を独自に検討してCに提出した。
ウ 被告会社丙は、名古屋駅東工区を受注目標とし、開削工法等、要素技術をCに訴求する方針としていた。同丙は、品川駅の非開削部については検討体制が整わないことなどを理由に指名の回避又は辞退を検討する一方、同駅新設北工区工事及び南工区工事については応札することとし、その出件後には、特殊な工法等につき専門業者から見積りの提出を受けるなどして作業を進め、社内で工法や契約条件等の検討を行うとともに、工事で活用し得る自社の技術や施工実績等をCに対して具体的に説明した旨の議事録を社内で共有するなどしたほか、技術提案等の内容を独自に検討してCに提出し、名古屋駅については、同駅新設中央工区工事を応札することとし、社内の関係部署に技術やコスト等の情報提供を依頼するなどしつつ作業を進め、技術提案等の内容を独自に検討してCに提出した。
エ Aは、自社が平成21年3月頃からCの依頼を受けて技術的検討等を行っていた品川駅新設工事を、Bは、同工事の一部を、それぞれJVの代表者として受注することを目指し、社内検討やCに対する営業活動を行っていたところ、Aを代表者とするJVが品川駅南工区その1工事及び名古屋駅新設中央西工区工事を、Bを代表者とするJVが品川駅北工区その1工事をそれぞれ受注し、現に施工するに至っている。
⑷ 被告会社等4社の幹部らによる本件新設工事等に関する情報交換の状況等被告会社甲、同丙及びAの幹部らは、平成26年4月下旬以降、概ね月1回の頻度で会合を開催し、工区割りや各社の傾注案件等の情報交換等を行い、品川駅南工区はAが、同駅北工区はBが、名古屋駅中央工区は同甲がそれぞれ受注を目指して相互に協力する方針を共有した上、平成27年1月以降、Bの幹部とも前記方針を共有し、各工区の工事の受注を目指す事業者の幹部らが、指名競争見積手続に参加した他の事業者の幹部らに、積算に関する資料や見積金額に関する情報を提供するなどし、これを受けた各社の幹部らは、Cに提出する自社の見積金額を調整するなどした。
3 所論は、本件新設工事は類例のない大規模かつ高難度のもので、その施工が現実的に可能な事業者は、被告会社等4社のうちCの依頼を受けて出件前に各工事の技術的検討等を行っていた特定の事業者に事実上限られており、その他の事業者は、Cに対する営業上の配慮等から指名競争見積手続に参加し、形だけ見積書や技術提案書を提出したにすぎず、各工事に係る役務の供給が現実的に可能であったわけではないから、本件取引分野における競争はそもそも存在せず、被告人らがこれを実質的に制限したとはいえない旨主張する。
4⑴ 被告人らの行為をもって本件取引分野における競争を実質的に制限するものと認められるか否かを判断するに当たっては、まず、本件新設工事の内容、性質を前提に、被告会社等4社の施工能力に関わる客観的な事実から、各社において、本件新設工事に係る役務を供給することが現実的に可能であったと認められるかを検討するのが相当である。
⑵ そこで検討すると、被告会社等4社は、それぞれ、前記の経営事項審査総合評点にも表れているように、高い技術力と充実した人的・物的資源等を擁し、本件新設工事を構成する工種、工法等と類似性又は共通性のある営業線近接工事や地下構造物構築工事等の施工実績も有していた(前記2⑶ア)のであるから、本件新設工事に活用し得る基本的な知見や技術等を備えていたものといえる。これに加え、被告会社等4社が受注目標等としていた各工区の工事(前記2⑶イないしエ)を構成する工種、工法等には、相互に一定の類似性又は共通性があること(前記2⑴)を考慮すると、被告会社等4社は、営業線近接工事や地下構造物構築工事等を通じて培った技術等を基礎としつつ、受注目標等とする工区で採用を検討している技術等を応用するなどして、当該工区以外の工区も施工することが可能であったものということができる。被告会社甲が品川駅北工区も自社の傾注案件等と位置付けて検討を行うなどしていたこと(前記2⑶イ)や、同丙が品川駅の非開削部については指名の回避等を検討する一方、同駅新設北工区工事及び南工区工事については活用可能な工法等を具体的に検討するなどしていたこと(前記2⑶ウ)は、これに沿う事情といえる。
また、①被告会社等4社が技術提案等の内容を独自に検討し(前記2⑶イないしエ)、品川駅新設工事の技術提案等について、事前の調査等によりある程度の知見を得ていたと考えられるCから不適格と評価されなかったこと(前記2⑵ア)など、各社が本件新設工事の施工上の課題等を検討するのに必要な知見、体制等を備えていたことを示す事情や、②被告会社甲及び同丙が見積りの過程等で専門業者の協力を得たり(前記2⑶イ及びウ)、本件新設工事を施工するに至った事業者がいずれもJVを組成していたりする(前記2⑶エ)など、各社が専門業者やJVを構成する事業者の技術及び人的・物的資源等も活用し得る立場にあったことを示す事情も認められ、これらの事情は、前記の判断を支えるものといえる。
そして、何より、本件新設工事の実際の施工状況等(前記2⑵及び⑶エ)は、AにはCの依頼による技術的検討等の対象ではなかった名古屋駅新設中央西工区工事の施工能力があったことを、Bには前記技術的検討等を行っていたわけではない品川駅北工区その1工事の施工能力があったことをそれぞれ意味する。この事実は、本件新設工事が分割可能で、現に分割して出件された前記各工事がいずれもその内容等において本件新設工事の重要な部分を構成するといえることも踏まえると、①被告会社等4社それぞれにおいて、前記技術的検討等を行っていなくても、本件新設工事に関し、客観的にCの需要を満たす水準の役務を供給する能力を有していたことを根拠付ける重要な事実になるといえ、また、②被告会社等4社それぞれにおいて、前記技術的検討等を行っていた事業者がその意思で取引条件を決めようとすることを牽制するに足る施工能力を備えていたことを示すものといえる。
⑶ 以上によれば、被告会社等4社それぞれにおいて、本件新設工事に係る役務を供給することが現実的に可能であったものと認められ、こうした客観的な状況の下で行われた被告会社等4社の幹部らによる前記情報交換等は、本件取引分野における競争が機能するための前提を失わせ、受注者及び受注価格等を被告会社等4社の意思である程度自由に左右し得る状態をもたらすものといえるから、被告人らの行為は、本件取引分野における競争を実質的に制限するものに当たるというべきである。
したがって、被告人らの行為をもって本件取引分野における競争を実質的に制限するものと認めた第1審判決を是認した原判決の判断は、その結論において是認することができる。 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。なお、裁判官渡辺惠理子の補足意見がある。
補足意見(渡辺惠理子)
裁判官渡辺惠理子の補足意見は、次のとおりである。 私は、法廷意見に賛同するものであるが、法廷意見が、競争の実質的な制限に当たるか否かの判断に際し、まず、被告会社等4社の施工能力に関わる客観的な事実から、役務の現実的な供給可能性があったと認められるかを検討するのが相当であるとしたことに関し、補足して意見を述べておきたい。
1 独占禁止法は、事業者が、「他の事業者と共同して」、「相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより」、「公共の利益に反して」、「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(以下「競争の実質的制限」という。)を不当な取引制限として禁止し(同法3条後段、2条6項)、これに違反した者に刑事罰を科している(同法89条1項1号、95条)。 不当な取引制限の罪の構成要件となる前記の各事実は、いずれも一定の規範的評価を伴って認定されるべきものである。一般に規範的評価を伴う事実の存否を判断するに際しては、一定の評価を積極的に基礎付ける具体的事実とその評価を妨げる具体的事実とを適切に抽出し、これらの具体的事実がどのような意味で評価を基礎付け、又は妨げるのかを論理則、経験則等に照らして吟味した上で、総合的に評価することが求められるものであり、このような手法による総合評価の重要性は、独占禁止法上の各罪の構成要件の検討においても異なるものではない。
2 本件のように、取引の対象となる商品役務の現実的な供給可能性が争われている事案においては、「競争の実質的制限」の存否について、前記1のような、具体的事実に基づく総合評価を適切に行うことが取り分け重要である。この点に関し、事業者間に意思の連絡と、これに基づく相互拘束と評し得る形式的行為が認められれば、直ちにその範囲で一定の取引分野が画定され、当該取引分野における「競争の実質的制限」があったと推認されるものとして、意思の連絡等に関わる事実の主張立証や認定に中心を置き、客観的な法益侵害の有無の検討をおろそかにすることは相当でない。なぜなら、昭和28年改正により形式的共同行為の禁止を定めた旧独占禁止法4条が削除された趣旨、経緯に鑑みても、競争に対する弊害が客観的な法益侵害を基礎付ける要素とされているといえ、また、少なくとも2以上の事業者において、取引の対象となる商品役務を供給することが現実的に可能な状況にあった、すなわち、他の事業者を牽制するに足る供給能力があったと客観的に認められなければ、競争に対する弊害という客観的な法益侵害が生じる前提を欠くことにもなるからである。
3 したがって、「競争の実質的制限」の存否を判断するに際しては、まず、客観的な具体的事実に基づく総合評価を行うこと、すなわち、取引の対象となる商品役務の内容、性質等を前提に、各事業者の供給実績、活用可能な技術、人的・物的資源等といった供給能力に関わる客観的な事実を基に、経験則等に照らし、当該商品役務の供給が現実的に可能であったと認められるかを事案に即して具体的に検討すべきである。そして、その検討に際しては、需要者が競争を期待していたとか、事業者らが協調する旨の意思を相通じていたなどといった、関係者の主観的な事情が結論を左右する決定的な要素になるものではないことに留意する必要がある。もとより、関係者の主観的な事情が供給能力を推知させる一事情になり得ることを否定するものではないが、それは飽くまで関係者の認識等が事業者らの供給能力に関わる客観的な事実を適切に反映していることが前提となる。
このように、供給能力に関わる客観的な事実にまず着目し、役務の現実的な供給可能性の有無を検討することは、法益侵害の有無についての判断の客観性を確保する上でも大きな意味を持つと考えられる。法廷意見は、以上のような観点から、 「競争の実質的制限」の存否を判断したものといえ、独占禁止法の適用が問題となる場面においても、規範的評価に関わる客観的な事実を適切に抽出し、それらの持つ実質的な意味を総合的に評価すべきであって、その重要性はいうまでもない。
4 本件についてみると、法廷意見が説示するとおり、被告会社等4社の施工能力に関わる客観的な事実について、その実質的な意味を吟味することで、工期や人的・物的資源等に関する所論の指摘を考慮してもなお、Cの依頼を受けた技術的検討等を行っていなかった事業者も含め、4社それぞれが、客観的にCの需要を満たす水準の役務を供給する能力を有し、前記技術的検討等を行っていた事業者がその意思で取引条件を決めようとすることを牽制するに足る施工能力を備えていたものといえ、したがって、4社それぞれにおいて、本件新設工事に係る役務を供給することが現実的に可能であったと認められる。なお、指名競争見積手続への参加や見積書の作成、提出といった行為は客観的な事実ではあるものの、手続に参加する事情等には様々なものがあり得るから、本件においては、必ずしも施工能力の有無に直結するものとはいえず、そのような事実を重視して現実的な施工能力があったと評価することは相当でない。
5 以上のとおり、「競争の実質的制限」の存否を判断するに当たっては、法廷意見が説示するように、競争に対する弊害、すなわち、市場の有する競争機能を損なうという弊害が生じる前提として、客観的に、複数の事業者に取引の対象となる商品役務の現実的な供給可能性があったといえるかを検討することが重要である。 ( 裁判長裁判官 渡辺惠理子 裁判官 林道晴 裁判官 石兼公博 裁判官 平木正洋 裁判官 沖野眞已)